患者情報:
- 国籍: ロシア
- 性別: 男性
- 年齢: 16歳
受傷機転:
2022年4月4日、患者はサッカーをしている際に右膝をひねり倒れる事故に遭う。その日にMRI撮影が行われた。
診断:
- 前十字靭帯(ACL)の完全断裂(中間部の断裂、タイプ2)
- 半月板に損傷の兆候はない。
- 後十字靭帯(PCL)にわずかな損傷がある。
治療:
患者は2022年5月10日に当院のナチュラリゼーション療法をオンラインにて開始した。この治療中、患者は他のリハビリ運動は禁止された。治療中に膝装具は使用しなかった。治療開始から3ヶ月後、再度MRI撮影を行った。
MRI評価:
断裂した前十字靭帯は、その連続性を回復したが、その繊維は細いものであった。状態はIhara分類では、gradeIIIに分類される。ラックマンテストでは、膝の不安定性は、3段階中の2と評価された。しかしながら、大腿四頭筋は順調な回復を示していた。これらの混在する結果を踏まえ、保存療法を更に継続することになった。
事故:
2022年11月8日、父の忠告に反して、患者はバスケットボールを始めた。ゲーム開始から約15分後、膝にクリック音と激しい痛みを感じ、直ちにプレーを中止した。その後、膝が腫れだした。11月27日に撮影されたMRIでは、前十字靭帯の完全な断裂は確認されず、前回のMRI結果から大きな変化が見られなかった。
前十靭帯再建手術:
患者はまだ若いこと、膝の不安定性が残存していること、再受傷への不安から、最終的に前十字靭帯再建手術を行うことを選択した。
考察:
治療中に膝装具を使用しないことが、治癒過程に悪影響をもたらすかもしれない。また、患者が早期にスポーツ活動を再開したことが、事故発生の確率を高めたと推測される。スポーツ活動の復帰に対して、より慎重なアプローチが必要であることを示唆している。今後、症例を更に重ねていき、装具着用の有無や競技開始時期について研究していく必要がある。
参考文献:
- Ihara H, Miwa M, Deya K, Torisu K. MRI of anterior cruciate ligament healing. J Comput Assist Tomogr. 1996 Mar-Apr;20(2):317-21. doi
- Ihara H, Kawano T. Influence of Age on Healing Capacity of Acute Tears of the Anterior Cruciate Ligament Based on Magnetic Resonance Imaging Assessment. J Comput Assist Tomogr. 2017 Mar/Apr;41(2):206-211. doi
- Pitsillides A, Stasinopoulos D, Giannakou K. Healing potential of the anterior cruciate ligament in terms of fiber continuity after a complete rupture: A systematic review. J Bodyw Mov Ther. 2021 Oct;28:246-254. doi
- Filbay, Stephanie R et al. “Healing of acute anterior cruciate ligament rupture on MRI and outcomes following non-surgical management with the Cross Bracing Protocol.” British journal of sports medicine, bjsports-2023-106931. 14 Jun. 2023, doi:10.1136/bjsports-2023-106931