患者情報と受傷機転:
8歳、男性、日本人
2021年11月30日、サッカーの試合中に、左膝を捻った。 同日、病院に運ばれ、レントゲン撮影を行った。 同年12月11日、MRI撮影を行い、診断は次のとおりであった。
前十字靭帯損傷
顆間隆起の剥離骨折の疑い
担当医師からは、患者の年齢が若すぎて、前十字靭帯の再建手術を行うと、骨の成長を妨げるリスクが高いため、手術適応外と説明を受けた。そして、骨の成長が止まる十代後半になってからの手術を勧められた。しかも、それまでの約10年間、激しい運動は禁止という説明を受けた。翌年1月18日、患者とその家族は当院を訪れ、前十字靭帯損傷の自然治癒療法を開始した。尚、膝の動揺性を検査するラックマンのテストは陽性であった。 その後、対面での治療とオンライン治療を2ケ月間継続し、同年3月30日に、2回目のMRI撮影を行った。
MRI画像では、前十字靭帯の明確な連続性は確認できなかった。しかし、ラックマンテストは、前回陽性だったものが、今回は陰性となった。 その後、ナチュラリゼーションの運動療法を継続し、8月17日に 3回目の MRI撮影を行った。
MRIの評価:
T1の写真(2、3,4枚目)では分かりにくいが、T2の写真(1枚目)では、前十字靭帯の明確な連続性を確認できる。
今後の展望と考察:
今回のMRIは、旧型(1.5テスラ)であるため解像度が低く、正確な画像診断を行うのは困難であった。しかし、MRIとラックマンのテストの総合評価から、前十字靭帯は自然治癒したと推測できる。 受傷から約10カ月で膝の可動域は完全に回復し、機能的な問題もなく、学校の体育の授業に復帰した。 怪我から1年後、患者は、サッカーの練習に復帰した。