患者情報:
44歳、男性、クロアチア人
受傷機転:
2022年11月5日、テニスのプレー中に左膝を捻った。11月9日にMRI撮影を行い、以下の診断を得た。
前十字靭帯断裂(単純完全断裂(Iharaの分類Ⅱ))
受傷後の経過:
受傷後は、理学療法などは行わず、安静にしていた。11月13日より、当院のオンライン治療を開始し、ナチュラリゼーション運動を自宅で3カ月間継続した。そして、2023年2月14日に、2回目のMRI撮影を行った。
MRIの結果:
断裂した前十字靭帯はその連続性を回復していた。しかしながら、MRIではまだ色が薄く、十分な太さを回復していなかった。その後、ナチュラリゼーション運動を継続し、3ヶ月後に三回目のMRI撮影を行った。
MRIの結果:
前回よりも前十字靭帯の色は濃くなり、太さも増していた。
その後の経過:
断裂した前十字靭帯は十分に自然治癒したと判断し、患者にはスポーツ復帰の許可を出した。患者は、段階的に運動強度を増していき、最終的に受傷前と変わらないレベルでテニスが出来るようになった。しかしながら、翌年の2024年8月頃、テニスのプレー中に逆側の右膝に違和感を感じた。1週間運動を休み、その後テニスを再開したが、違和感は残ったままであった。そして、同年10月1日にMRI撮影を行った。
MRIの結果:
MRIでは、右膝の前十字靭帯は部分損傷を示していたが、その連続性は概ね保たれていた。
考察:
最初に受傷した左膝の前十字靭帯は十分に自然治癒し、その後、スポーツ復帰も果たした。しかしながら、その後反対側の前十字靭帯を損傷してしまった。前十字靭帯損傷後に、反対側の前十字靭帯も損傷する確率は少なくないと言われているが、本患者はそれを体現してしまった。前十字靭帯再建や自然治癒後は、左右のバランスが崩れやすいことから、反対側も受傷しやすいと考えられる。そのため、左右差を最小化し、体のバランスを保つトレーニングの継続が必要であると考える。
参考文献:
- Filbay, Stephanie R et al. “Healing of acute anterior cruciate ligament rupture on MRI and outcomes following non-surgical management with the Cross Bracing Protocol.” British journal of sports medicine, bjsports-202
- Ihara H, Kawano T. Influence of Age on Healing Capacity of Acute Tears of the Anterior Cruciate Ligament Based on Magnetic Resonance Imaging Assessment. J Comput Assist Tomogr. 2017 Mar/Apr;41(2):206-211. doi
- Roemer FW, Frobell R, Lohmander LS, Niu J, Guermazi A. Anterior Cruciate Ligament OsteoArthritis Score (ACLOAS): Longitudinal MRI-based whole joint assessment of anterior cruciate ligament injury. Osteoarthritis Cartilage. 2014 May;22(5):668-82. doi: 10.1016/j.joca.2014.03.006.