患者情報:
17歳、男、アメリカ人
受傷機転:
2022年6月11日、スケートボードのジャンプの着地に失敗し、右膝を捻った。6月25日にMRI撮影を行い、以下の診断を得た。
前十字靭帯断裂(断端が不明瞭(Iharaの分類Ⅳ))
外側側副靭帯損傷
受傷後の経過:
2022年8月3日より、当院のナチュラリゼーション療法をオンラインにて開始した。オンライン治療と自宅でのナチュラリゼーションを継続し、治療開始から5ヶ月後に再度MRI撮影を行った。尚、患者は機能的装具を使用していなかった。
MRIの結果:
断裂した前十字靭帯は、太く緊張性のある形態で連続性を回復していた。(Iharaの治癒分類A)
考察:
若年層の前十字靭帯断裂は、その繊維が柔らかいことから、断裂時に不明瞭な断裂になるケースが多くみられる。本症例も、同様に不明瞭な断裂端を有しており、自然治癒は困難であると予想できた。さらに、治療開始時期も受傷後8週間と遅く、自然治癒の成功は危ぶまれた。しかし、その予想に反し、太く緊張性のある形態で自然治癒していた。Iharaの治癒分類では、最高グレードAに分類される。一つ残念なことは、治療期間中に、内側及び外側半月板を軽度であるが損傷していたことである。患者は機能的装具を着用しておらず、私もその指示をしていなかった。こういった例を鑑みて、2023年からは患者全員に装具の着用を指示している。
参考文献:
- Ihara H, Miwa M, Deya K, Torisu K. MRI of anterior cruciate ligament healing. J Comput Assist Tomogr. 1996 Mar-Apr;20(2):317-21. doi
- Ihara H, Kawano T. Influence of Age on Healing Capacity of Acute Tears of the Anterior Cruciate Ligament Based on Magnetic Resonance Imaging Assessment. J Comput Assist Tomogr. 2017 Mar/Apr;41(2):206-211. doi
- Pitsillides A, Stasinopoulos D, Giannakou K. Healing potential of the anterior cruciate ligament in terms of fiber continuity after a complete rupture: A systematic review. J Bodyw Mov Ther. 2021 Oct;28:246-254. doi
- Filbay, Stephanie R et al. “Healing of acute anterior cruciate ligament rupture on MRI and outcomes following non-surgical management with the Cross Bracing Protocol.” British journal of sports medicine, bjsports-202