患者情報:
38歳、男性、日本人
受傷機転:
2022年9月11日、サッカーの試合中に、相手が左からぶつかってきた。その時、右足で踏ん張った時に、右膝が不自然な方向へ捻じれた。当日に病院へ行き、翌日にMRI撮影を行い、以下の診断を得た。
右膝十字靭帯断裂(中間部での断裂、かつ断端同士が離開している(Iharaの分類Ⅲ))
受傷後の経過:
9月15日に、別の病院を受診した。ラックマンテストの結果は陽性であった。9月19日に、関節穿刺によって関節液を摘出した。その後、腫脹は無く、膝屈曲90度まで可能であった。
10月3日に、当院に来院した。ラックマンテスト陽性、レバーアームテスト陽性、ピボットシフト陰性であった。ナチュラリゼーション運動療法を開始し、自宅でも毎日継続した。10月18日に再度MRI検査を行った。
断裂した前十字靭帯の自然癒合が確認された。その後もナチュラリゼーションを継続し、12月15日と翌年1月19日にMRI検査を行った。
前十字靭帯の連続性も十分に確認でき、弛みも改善していた。
考察:
患者は、元ビーチサッカーの日本代表選手というトップアスリートであった。まだ現役レベルでサッカーをやりたいという希望があり、頻繁にMRI撮影を行い、その治癒過程をつぶさに確認してきた。医者のみならず、周囲のサッカー関係者全員が手術を勧める中、自然治癒療法を選択したことは英断であった。画像診断による治癒レベルは、受傷後4カ月目に於いてグレードⅡであった。ハイレベルでのサッカーへの復帰は心配されたが、リハビリを重ね、数ヶ月後にはサッカーへ復帰していった。
参考文献:
- Ihara H, Miwa M, Deya K, Torisu K. MRI of anterior cruciate ligament healing. J Comput Assist Tomogr. 1996 Mar-Apr;20(2):317-21. doi
- Ihara H, Kawano T. Influence of Age on Healing Capacity of Acute Tears of the Anterior Cruciate Ligament Based on Magnetic Resonance Imaging Assessment. J Comput Assist Tomogr. 2017 Mar/Apr;41(2):206-211. doi
- Pitsillides A, Stasinopoulos D, Giannakou K. Healing potential of the anterior cruciate ligament in terms of fiber continuity after a complete rupture: A systematic review. J Bodyw Mov Ther. 2021 Oct;28:246-254. doi
- Filbay, Stephanie R et al. “Healing of acute anterior cruciate ligament rupture on MRI and outcomes following non-surgical management with the Cross Bracing Protocol.” British journal of sports medicine, bjsports-202