進化機能解剖学7 股関節の進化論

今回は、股関節の解剖学と機能について系統発生学的に解説してみようと思います。

系統発生学的には、ヒトの手足は魚のヒレから進化したと考えられています。

魚類から両生類に進化した時に、川底や陸上で前進するためにこのヒレは手足へと進化しました。

(2)Clack, J. A. 手足を持った魚たち より

両生類であるカエルとオオサンショウウオの骨格を見てみましょう。

手足は脊柱に対して外側を向き、形態的にも手足は非常に類似しています。

上腕骨と大腿骨の形態も非常に類似しています。

水を掻くためのヒレは、地面を支えるための手足へと進化しました。

そのため、肩と股関節は90度外旋していきました。

爬虫類になると陸上での生活が主になり、体と地面との摩擦を軽減して前進するために、四肢で地面と押す筋力が発達しました。

ワニの骨格をご覧ください。

両生類に比べて四肢の骨がかなり太くなっています。

両生類から哺乳類へと進化する時に、四肢は大きく形態を変えることになります。

四肢が地面に対して直立していくという大進化を遂げました。

Tom Hogervorst, Evie E. Vereecke 2014.Evolution of the human hip. Part 1: the osseous framework.J Hip Preserv Surg. 2014 Oct

Aが爬虫類、Bがネズミのような初期哺乳類、Cがネコやウマのような哺乳類

爬虫類から哺乳類へと進化する過程において、上肢は外旋し、下肢は内旋して両肢共直立していきました。

そういった進化から、哺乳類では肘と膝が向き合う形態になったのです。

その後、哺乳類から類人猿、そしてヒトへと進化していく訳ですが、ここでも大きな大進化を遂げることになります。

四足歩行から、直立二足歩行へという大進化が起こりました。

その中間となる類人猿とヒトの形態的違いを見てみましょう。

Tom Hogervorst, Evie E. Vereecke 2014.Evolution of the human hip. Part 1: the osseous framework.J Hip Preserv Surg. 2014 Oct

類人猿は腰が丸く、膝と股関節も曲がっています。

ヒトは完全な直立を獲得するために、膝と股関節を伸展させ、かつ骨盤を前傾させたのです。

骨盤の前傾によって腰椎も前湾し、安定した直立のために脊柱のS字形を獲得していったのです。

ヒトの個体発生において、進化の歴史は繰り返されています。

赤ちゃんは両生類的な開排位で生まれてきます。

そこから更に股関節を90度外旋した爬虫類の動きは殆ど行いません。

哺乳類的な動きであるハイハイで股関節は内旋するので、爬虫類的なパターンは省略されたものと考えています。

ヒトの股関節が完全に進化したと言えないのは、直立した時に大腿骨頭が寛骨臼から前へはみ出てしまうという点にあります。

形態的には、ヒトは未だに無理をして直立をしていると言えるでしょう。

股関節にとって楽なポジションは、関節面が一致する屈曲位です。

しかし、この屈曲位のまま直立していると、骨盤後傾によって様々な障害を引き起こします。

系統発生に従って、開排位と四つ這いのポジションで、しっかりと股関節を発達させてから直立へと移行することが重要であると考えます。

股関節を正常に発達させるワークの一つである「ずりばい」をご紹介します。両生類の動きをモチーフにしています。

参考文献

(1)第36話私たちの身体に魚の痕跡(その1) タイのタイ, https://blogs.yahoo.co.jp/horitujoy/39886285.html 2019年6月19日アクセス.

(2)Clack, J. A. 手足を持った魚たち――脊椎動物の上陸戦略. 池田比佐子訳. 東京, 講談社, 2000. p.156

(3)ありんこ日記 AntRoom,http://blog.livedoor.jp/antroom/archives/51085457.html2019年6月19日アクセス.

(4)フィットネスクラブ シナジー オオサンショウウオ 骨格, https://ownfitnessclub.amebaownd.com/posts/53118332019年6月19日アクセス.

(5)Wikipedia Crocodilian armor,https://en.wikipedia.org/wiki/Crocodilian_armor2019年6月19日アクセス.

(6),(7)Tom Hogervorst, Evie E. Vereecke 2014.Evolution of the human hip. Part 1: the osseous framework.J Hip Preserv Surg. 2014 Oct

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